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TRPGシステムレビュー

無限のファンタジア

 
「グリモア」
神の遺した奇跡の証
持つ者は持たざる者を支配する
それ故、ヒトは互いに争った

そして、現在

七の都を灰に変え
九の都を海に沈め
己が身を異形に変えてもなお
ヒトは、争いを続けていた


● どんなゲームですか?
 PBW(プレイ・バイ・ウェブ)ゲーム、、『無限のファンタジア』 (公式ページ) の世界観やシステムをTRPGへ移植したものです。プレイヤー(PL)は、神々よりヒトが授かった力の源『グリモア』より 力を与えられた者達、『冒険者』を操り、他の冒険者と共に『旅団』を形成し 冒険の日々を送ることになります。どのような冒険を送ることになるのかは、ゲームマスター(GM)が ある程度自由に設定することが出来ます。
 世界観はPBW版の設定に忠実なため、詳細な設定情報は公式ページの情報を読まれると良いでしょう。 また、実際にPBWに参加されてみるのも良いかもしれません。

● プレイヤーキャラクターはどんな人ですか?なにをするんですか?
 プレイヤーキャラクター(PC)である『冒険者』は、前述の『グリモア』より『アビリティ』と呼ばれる力を 得た者達です。冒険者たるに相応しい意思を持ち、然るべき儀式を行えば誰もが冒険者となり、 『アビリティ』を行使できるようになります。
 冒険者達がグリモアより得た力をどのように行使するのかは冒険者自身に委ねられます。 また、冒険者達の目的は冒険者自身により構成される『旅団』ごとに定められており、 それは人助けや財宝の獲得であったり、強者との戦い、冤罪からの逃亡、秘密結社の一員など様々です。 旅団の目的は主に、GMによりあらかじめ設定されます。

● ゲームシステムを簡単に教えてください。
■旅団の作成
 最初に、GMはPLが操る冒険者達が集う『旅団』を作成します。まず、8種ある旅団クラス  ― トレジャーハンター、旅芸人一座、伝説の勇者など ― から1つ、8種ある旅団ポリシー  ― 誇り、非情、不殺など ― から1つずつを、物語にあわせて選択します。また、旅団ポリシー には『団長の資格』が記されており、この条件に該当したPCが旅団の団長となります。
 旅団クラスと旅団ポリシーにはそれぞれ旅団の指針となる『掟』が存在し、冒険終了時の経験点の獲得にも 影響します。

■キャラクターメイキング
 キャラクターメイキングは、まず名前と性別を決定。次に11種のクラス(『武人』『重騎士』等の近接戦闘クラス、 『紋章術士』のような魔法使い系クラスなど)、6種の種族(ヒト、リザードマン、セイレーンなど) 、スタイル(『痩身』『肥満』など)、誕生日、生まれを表からそれぞれ1つを選択することで能力値と初期装備が 決定され、続いて趣味・性格・プロフィールを決めます。

 また、選択したクラスごとに固有の『アビリティ』(他システムではスキル、特技などと呼ばれるもの)を 能力値から算出されたキャパシティポイント(CP)の範囲内で自由に選択します。 各アビリティには3段階のレベル(基本・改・奥義)があり、それぞれに設定された必要CPの合計がCP以下に なるように選択します。この選択を『活性化』と呼び、冒険ごとに選択しなおす事が可能です。
 キャラクターメイキングに必要な手間はそれほど多くはなく、クラスやアビリティの選択等に対してGMからの指針があれば メイキングは比較的短時間で終わると思われます。

■判定方法
 使用するダイスは基本的に20面体が1個。場合により複数の20面ダイスが必要になります。 判定の方法は、能力値から計算された成功値以下をD20(1〜20の乱数)で 出せば判定は成功です。この際、成功値の1/2を超えていれば1レベル成功、1/2以下なら2レベル成功、 同様に1/4なら4レベル成功、1/8以下なら8レベル成功・・・として『成功度』が算出されます。
 対抗ロールなどの際には成功度が高いほうを勝利者とし、同値は引き分け。 戦闘における攻撃・防御においては同値は『ガード』となり、防御側の装甲値を上昇させてダメージを計算します。

■戦闘
 戦闘の主な進行は

  ・判定によるイニシアティブ決定(最初のラウンドのみ)
  ・手番ごとに1回の行動(移動+行動も可能)
  ・リアクション無制限
  ・アビリティ使用は使用回数を消費

 と言うシンプルなもので、ルール上距離が存在しますが基本的に「前衛」「後衛」と言う概念で表現されます。 FEAR社製の『エンゲージ』のように複雑なルールは存在しません。

 特筆すべきは『戦略ポイント』の存在。これは戦闘開始前の状況、 例えば奇襲や地形効果などから互いの陣営の有利不利を比較し、有利な側はそれに応じた値だけ 『戦略ポイント』を得ることができるもので、このポイントを消費することで キャラクターは『かばう』『コンビネーション』『カウンター』と言った特殊な行動を行えるよう になります。

■その他
 冒険者は幸運(冒険ごとに獲得する)を消費することで『グリモアエフェクト』と言う効果を 起すことが出来ます。これは仲間の想いを集めて力に変えるもので、判定時のダイスロール成功確率が上昇します。
 グリモアエフェクトの使用者は、判定の結果により仲間へに対し何らかの 『感情』を獲得します。この『感情』はルール的に管理されており、消費することで前述の『戦略ポイント』のように 使用することが出来るほか、『共感』状態と言う特殊な状態になったり、積もり積もった感情が爆発しキャラクターを暴走 させてしまうこともあります。

 また、幸運が0になった冒険者は人間とモンスターの中間存在、『キマイラ』へと変異してしまいます (PCならばHPが0になったときに望むことでも発生させることも可能)。 これにより冒険者は強力な力を得ますが、完全なモンスター(NPC)と化すリスクをはらんでおり、 またシナリオ終了時の獲得経験点が半減します。 キマイラ状態は冒険の終了時に幸運が上昇することで解除が可能ですが、望むならばキマイラ状態を 維持したまま次の冒険に臨む事も可能です。

 キャラクターの所持金は『裕福度』と呼ばれる大雑把なもので管理され、冒険の結果これを獲得したり、 消費することで装備を購入することが出来ます。
 裕福度はこのほかに消費して装備品を独自にカスタマイズすることで、装備の性能を向上させたり、装備に前述の 『アビリティ』を付与させ、使用することもできます。

● ぶっちゃけオススメですか?
 ファンタジー系システムのご多望に漏れず戦闘中心のシステムですが、戦略を練ることで戦闘を優位に進めることも可能。 クラスや種族、アビリティと言ったシステムはそれほど目新しい物ではありませんが、「旅団」システムのお陰でGMが作りたい物語に 合わせてPLの目的を示すことが出来るようになっており、そういった試みは評価できます。また、冒険ごとにアビリティが選択できたり、 装備のカスタマイズルールは非常にやり込み甲斐を感じさせます。ゲーム的なバランスは若干大雑把になっている感も否めませんが、 破綻しているとは思えない程度に纏まっています(システム的なアラはありますが)。
 ルールブックは全176ページオールカラー(!)で、キャラクター種族・クラスや旅団クラスのほか、 装備品、モンスターにもそれぞれイラストが(当然カラーで)ついています。データ量はそれなりに多く、構成もすっきりしていて、 ルールブック自体には特に読み辛さは感じませんでした。

 個人的な感想としては、これを使って遊んでもいいかな?と思える程度には良い出来だと思います。

 価格は「2,857円+税」。全ページカラーと言う無駄に豪華な作りのせいか、 高すぎるとは思えない程度の金額ですが、とはいえ馬鹿に出来る金額でもありません。
 出来るならばコンベンション等で実際にプレイしてみるか、友人・知人や web、Role&Roll誌で情報を集めてみてから 購入されてはいかがでしょうか。



2005.01.04
Tryarks(三元の間)


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