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TRPGシステムレビュー

真・女神転生V−NOCTURNE TRPG 〜東京受胎〜

「東京受胎」
その日を境に東京は
閉ざされた世界へと変貌する

用意された駒は三つ
僅かな人数を残して消えた「人間」
跳梁跋扈する神話・伝承の住人「悪魔」
力を得るために人間を捨てた者「魔人」

「新たなる夜明け」を巡り
今、戦いの舞台が幕を開ける


● どんなゲームですか?
 プレイステーション2用ゲームソフト「真・女神転生V−NOCTURNE−」 (公式ページ) の世界観やシステムをTRPGへ移植したものです。新たな世界を創生する為引き起こされたカタストロフィ 「東京受胎」により、既存のあらゆる秩序が失われた世界・「ボルテクス界」。 その混沌とした環境の中でプレイヤーキャラクター達は世界創世を巡る戦いの中へと踏み込んでいく ことになる・・・、そんなお話をやります。
 基本的にコンシューマ版の設定に忠実なため、世界観等の背景情報は公式ページを読むか、 コンシューマ版をプレイされてみると良いでしょう。

● プレイヤーキャラクターはどんな人ですか?なにをするんですか?
 プレイヤーキャラクターに選択できるのは、次の3つのクラスです。

  ・魔人:悪魔の力の結晶「マガタマ」により悪魔の力を得た人間
  ・悪魔:ボルテクス界の住人、他の悪魔と合体することで強化・変異していく
  ・人間:ボルテクス界に残された人間、その力は弱いが幾多もの可能性を秘める

 コンシューマ版では魔人しか選択できませんでしたが、TRPG版においては悪魔や普通の人間を PCとして選ぶことが出来ます。
 プレイヤーキャラクター達は、最初はごく当たり前の、或いはちょっとしたこと− 「生き延びるため」「巻き込まれただけ」「強くなりたい」「興味があった」− 等の動機を持って事態に巻き込まれ、やがては確固たる意思と共に新たなる世界創世を巡る 争いの中心を目ざして行く事になります。

● ゲームシステムを簡単に教えてください。
■キャラクターメイキング
 キャラクターメイキングは用意された8つのサンプル・キャラクターを 使用する「クイックスタート」、自分で1から作成していく 「フルスクラッチ」の二つの方法があります。
 前者が簡単なのは言わずもがな。後者は最初に前述の「魔人」「悪魔」「人間」 の3種からクラスを選択。次に、魔人ならマガタマ・ 悪魔ならピクシーやジャックフロスト等の種族・人間ならサブクラス (職業)を選択すると初期のスキル・能力値が自動的に決まり、 指定されたレベル(初期レベルは10が基本)までレベルアップ作業を行い 1レベルごとに能力値を1つ上昇・マガタマやサブクラス別に指定された 現在レベル以下のスキルをすべて取得。最後に10レベル毎に取得できる 追加スキルを取得したらほぼ完了です。
 後はキャラクターシートの判定値を計算(能力値から自動決定)し、 名前や背景・コネ・目標等を決めれば完成。メイキングは非常に短時間で 完了すると言えましょう。

■判定方法
 使用するダイスは10面体が2個。基本的にはこれでこと足ります。 判定の方法は、能力値から計算された成功値以下をD100(1〜100の乱数)で 出せば成功です。この際、成功値の1/10以下を出せればクリティカル、 96〜99は自動失敗、00はファンブルとなります。
 戦闘における攻撃の命中と回避は同じ判定方法を用いますが、 命中率と比較して回避率が圧倒的に低いです。 また命中値は100を超えると2回に分けた判定が、200を超えると 3回に分けた判定が可能です。(例:命中値120の場合は命中値60で2回判定、 210の場合は70で3回判定)

■戦闘
 戦闘の主なルールイメージは

  ・判定によるイニシアティブ決定
  ・手番ごとに1回の行動
  ・リアクション無制限
  ・スキル使用は基本的にMPやHPを消費

 と言うシンプルなもの。またコンシューマ版がそうであったように、悪魔と 「会話」による交渉をすることでアイテムや「悪魔カード」、情報などを取得できます。 特に悪魔PCが合体などに使用する悪魔カードは、この方法でしか手に入りません。 戦闘に入っていても手番を消費すればルール的に交渉処理を行えてしまうあたり、 有る意味非常にゲーム的と言えます。

■その他
 PCは命運と言う、いわばヒーローポイントを持っており、これを消費することで 幾つかの特典(判定の振り直し、成功率上昇、ダメージを半減)を得ることが出来ます。 これはシナリオ単位で回復します。
 またアイテムは魔石・宝玉などの回復アイテムや宝石など、女神転生では「おなじみ」の アイテムに加え人間のみが使用できる武器・防具があります。宝石はアイテムや 精霊、ミタマ(共に悪魔PCが合体で使用する)との交換に使用できます。 こういった部分を含め、このゲームでは「コンシューマ版の再現に勤めた」 部分が随所に見られます。
 スキル(魔法や攻撃技の総称)はレベルが2〜5程度上がるか合体すると色々と覚えて いけるのですが、覚えておけるスキルの個数は8個まで。やれることの幅がやや狭いので、 TRPGとして遊ぶ際にはこれはちょっと残念な仕様です。
 世界観は基本的にコンシューマ版と同様「ボルテクス界」にて戦いの日々を送るもの ですが、世界観を現代日本に変更するオプションルールもあり、「受胎前夜」「200X年 、東京」「学園」などを舞台にして遊ぶことも可能です。

● ぶっちゃけオススメですか?
 前述の「コンシューマ版の再現」に勤めたゲームであるため、ハック&スラッシュ (≒敵狩りまくりお宝GETバトル風)が中心になります。 ほぼコンシューマ版の再現を行える(ボスモンスターも含め敵データが満載)ので、 元のゲームが好きな方にはお勧めできると思います。
 逆に女神転生の知識が乏しい場合はシステムにシュールを感じる部分もあるでしょうし、 またゲーム経験者と未経験者の間に知識的な幾つかの差が生じることも有るでしょう。 (なにしろコネになるNPCの情報が殆ど記載されていません!) そう言う意味ではこの仕様はマイナス要素と言わざるを得ません。

 ルールブックの作りそのものは非常に丁寧で、コンシューマ版未プレイの 人が読むことを(多少は)考慮された構成になっています。スキルも表形式で 見易く、敵のデータ量もかなり豊富でGMは手間いらずです。
 ゲーム的なバランスで言えばそこそこ良好に作られているようで、 余程でなければ破綻した状態にはならないかと思われます。 スキルの豊富さが売りだった過去作品(真女神転生TPRG誕生編、覚醒編) と比較するとそのあたりに物足りなさを感じるかもしれませんが、 これはこれで別のゲームと考えれば割り切って楽しめると思います。
新世黙示録の話はしないでください (つД`)

 価格はちょーっと高めの「4,200円+税」。懐に余裕が有るなら手を出してみるのも 一興かも知れませんが、若干人を選ぶゲームではあるため万人に手放しでオススメは出来ません。 出来ればコンベンションで実際にプレイしてみる、webなどで情報を集めてみる、 Role&Roll 7月号に掲載された ジャンプスタートキット(体験版)で遊んでみる等してから考えてみては いかがでしょうか。



2004.09.01
Tryarks(三元の間)


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