■カルネアデスの話 このシナリオはPCの再生者が3人いることを前提にしています。 始めてこのゲームを遊ぶプレイヤーは推奨されません。 どうしても、という場合、必ずルールブック付属のリプレイやシナリオを読んでください。 セッションの時間はPC作成の時間を除き3〜4時間程度です。 ※難易度調整 既にシナリオを遊んでいる場合や攻撃系FBEが過剰にある場合、あるいはその逆(まったく攻撃系FBEが無い/不足する)場合、 熊(廃工場の野生動物)の耐久力の増減や違う動物に差し替える等で難易度調整を行ってください。 理想は「プレイヤー側の攻撃手番でダメージを与えられない限り1ターン以内で倒されず」、「2ターン目最後でほぼ確実に倒される」範囲に収める程度です。 ■シナリオ情報A(事前に提示するハンドアウト) ---------------------- クエスト名:回転体からの逃亡 ---------------------- 当事者:【川辺村の住人】 川辺村は、山に近い川辺にある小さなコミュニティです。人数は18人ですが年代が二極化しており、12人が老人、6人が子供を含む若者です。 現状の問題:【ウォーロードグループ、及び回転体の襲撃】 このコミュニティは本日夕方に到着するウォーロードの一団によって蹂躙されます。さらに深夜には回転体による襲撃を受け、ウォーロードを含む全員が消滅するでしょう。 結果予測:【川辺村コミュニティの壊滅】 川辺村コミュニティが壊滅します。 ステップとメソッド ステップ1:【ウォーロードの破壊】 ウォーロードのグループはリーダーを倒せば内部分裂を起こし、自滅が予測されます。リーダーは非常に自信過剰であり、対決に持ち込むのは容易です。 ステップ2:【若者グループの説得】 若者グループのリーダーを説得し、現状の危機を伝え脱出を促してください。回転体の特性の関係上、老人グループには犠牲になってもらう必要があります。 ステップ3:【避難区域の安全確保】 川辺村脱出後、避難場所で一晩を明かす必要があります。野生動物を排除し、避難区域の安全を確保してください。 ステップ4:【安全圏までの避難】 川辺村を脱出し、避難区域まで移動します。若者グループのみであれば再生者が手伝うことで比較的容易に移動が可能です。 ------------------ ■シナリオ情報B(エレボスからの解説と共に提示される情報) ---------------------- クエスト名:回転体からの逃亡 ---------------------- 当事者:川辺村の住人 現状の問題:ウォーロードグループ、及び回転体の襲撃 結果予測:川辺村コミュニティの壊滅 ---------------------- ステップ1:ウォーロードの破壊(メソッド:荒野/戦闘) ステップ2:若者グループの説得(メソッド:川辺村/調和/難易度7) ステップ3:避難区域の安全確保(メソッド:廃工場/戦闘) ステップ4:安全圏までの避難(メソッド:廃工場/生存/難易度7) ------------------ 【クエスト概略】 ・ウォーロードグループが夕方(3フェイズ目)に川辺村に到達、村を蹂躙する。彼らは主導者を倒せば自滅する。 ・川辺村の住人の居場所はウォーロードグループに補足されるため、対処が必須。 ・回転体は深夜(4フェイズ目)に川辺村に到達する。 ・回転体は周辺環境を変質させながら人がより多くいる方向へ移動し、接触した人間を消滅させる。 ・回転体は12人以上の人間を消滅させた後、同じエリアに人間がいなければ消える(どこか遠い場所へ転移する)。 ・回転体の対処如何に関わらず、川辺村とその周辺は人が住めない環境になる。山の廃工場で夜明けを待ってから山向こうへ移住する必要がある。 ・避難先の安全確保のため、山の廃工場の野生動物を排除しておかなければならない。 ------------------ ■エレボスによる解説(プレイヤーへの開示情報。そのまま読み上げて問題ありません) ・川辺村は、山に近い川辺にある小さなコミュニティです。人数は18人ですが年代が二極化しており、12人が老人、6人が子供を含む若者です。 このコミュニティは本日夕方に到着するウォーロードの一団によって蹂躙されます。さらに深夜には回転体による襲撃を受け、ウォーロードを含む全員が消滅するでしょう。 ・ウォーロードのグループは狂気に侵された主導者が率いる、自律四輪車・自律二輪車・自律ドローン各1台、及び20名の追従者で構成された武装集団です。主導者は自分の強さを周囲に誇示する自信家です。そのため貴方たち3人がかりでも1人で挑んでくることでしょう。首尾よく主導者を倒すことができればグループは次期リーダーを巡って内部分裂を起こし、自滅が予測されます。彼らは刹那的で生産性が無く、暴力に明け暮れることを至上としており存在価値は皆無です。 ・ウォーロードグループには自律ドローンが所属しています。仮に全員で川辺村を脱出した場合、必ず追いつかれます。ウォーロードグループは夕方には川辺村に到着することが予測されるため、対処を急ぐ必要があります。 ・接近中の回転体は近くに人間がいれば経路上の物質を消滅させながらゆるやかに接近し、接触した人間を消滅させます。深夜に川辺村への到達が見込まれますが、全員が移動した場合はそこに向かうでしょう。 ・回転体は常に近辺の人数が多い方角へ移動し、一定数の人間を消滅させた後、付近に人間がいなければ地球のランダムな場所へ瞬間移動します。これまでの観測実績から、あと12人の人間を消滅させれば転移を行うでしょう。 ・回転体の経路は変質し、赫旋熱の発症を始め様々な危険が予測されます。川辺村にとどまる事は推奨されません。 ・なお、回転体のターゲットはあくまで人間の生存者のみです。他の動植物は勿論、自律機械や再生者を認識していないようです。 ・川辺村の若者グループのみを避難させてください。彼らの1人は将来的に地域一帯のコミュニティグループを主導する人物への成長が見込まれています。 ・近辺で最も安全な避難先になる施設は山間にある廃工場です。危険な野生動物が住み着いているため事前に排除しておく必要があります。避難先で夜明けを迎えてから山を越えれば、翌日の夕方には別のコミュニティへ合流が可能です。 ■登場人物(記載情報はエレボスから公開情報として提示されます。【★必ずプレイヤーに明示してください】) シン(データ:常人) 川辺村コミュニティのリーダー…といってもタンバに指名された名ばかりのリーダーです。指示に従わず声高に要求だけしてくる老人達に日々頭を悩ませる一方で、若者グループから噴出する不満との板挟みになっています。多少の医学知識を有しています。 ・手製の槍(武器) タンバ(データ:専門家) 川辺村コミュニティにおける老人達のまとめ役。温厚な性格です。副業で山師(ハンター)をしていた彼の知識・経験はコミュニティの支えになっています。 ・猟銃(武器) ・ハンター:猟銃が必要。毎ターン終了時、エリア内の野獣1体に対し2ダメージ。手番を失う。他の味方がいる場合、攻撃の対象にならない ムサシ(データ:能力を含め武将と同じ) 湾岸村に拠点を構えるウォーロード。暴力と野球で統一国家を築くという思想を持つ狂人です。拠点の野球場で精鋭チームを育成しています。スカウトと称し一団を率いて遠征を行い、既にいくつかのコミュニティが甚大な損害を受けています。 カッチン(データ:常人) 独特なファッション(モヒカンヘアー)と要領の良さから周囲に持ち上げられた結果、武装集団のNo.2に収まっている人物です。特筆する点もない凡人ですが、一団の被害者を秘密裡に埋葬するという理解不能な奇行をとっています。 ・火勢の強いガスバーナー:武器として扱われない。一見火炎放射器に見える。主な用途はこけ脅しと炙り料理。 ニコ(データ:自律乗用車の全パラメータ-1) 自律二輪車。搭載人格はやや言葉遣いが乱暴な少女です。搭乗者のカッチンを常にモニターしており、折を見て辛辣な暴言を浴びせます。余程彼のことが嫌いなのでしょうね。 ・9o機関砲(武器) ・多連装ミサイル:偶数ターン開始時に指定した対象すべてに3ダメージ 熊(データ:熊) 廃工場を根城にしている凶暴な熊です。子熊2匹を育てており、人間を餌だと考えているようです。 ■エリア情報 エリア1:荒野 かつて街があった場所。回転体との交戦の余波で資源価値の無い瓦礫の荒野が広がっている。 エリア2:山道 川辺村へと続く山道。本来交通に使われていた道路は崩落しており、荒れた山道を行かねばならない。 エリア3:川辺村 山の川辺にある小さなコミュニティ。廃村だったため回転体との戦いに巻き込まれてはいないが、古く崩れかけの住宅が殆ど。 エリア4:廃工場 かつて工場だった場所。入口の門は奇妙にねじくれており、自律機械は入れそうにない。ここを抜け山を越えれば隣接する地区の中規模コミュニティがある。 ■イベント 発生するイベントを記載します。起こし忘れに注意してください。 特に4フェイズ目に必ず発生する「★カルネアデスの板」は本シナリオにおいて最も重要なイベントです。 ★頭痛のタネがまた増えた 時間帯:いつでも 条件:最初に川辺村を訪問した イベント内容:シンが挨拶をしてきます。過去に再生者が関わってきた際、若者グループだけでも村を離れるべきではないか、という提案に乗りかけたため、再生者に対する対応は比較的好意的です。自己評価が低く、自分はリーダーに向いていない、と常に思っています。 ★動くな! 時間帯:いつでも 条件:最初に山道を訪れた イベント内容:タンバが猟銃を向け、警告してきます。川辺村は以前にも再生者が訪問しています。その際のクエストは住民の移住でしたが、老人グループを見捨てるか否かで再生者同士の仲間割れが発生し、不毛な消耗戦の末時間切れになりました。そのため老人グループの大半は再生者を信用していません。タンバは再生者の言動には耳を傾ける丁寧な態度をとりますが、内心は非常に懐疑的です。 ★俺のチームに入らないか? 時間帯:午前〜午後 場所:荒野または山道 条件:ウォーロードグループに会いに行った、または山道で足止め工作に成功した ※「山道で足止め工作に成功した」後の場合、再生者が村へ引き上げようとしたところへミサイルが飛来し足場が崩れ、ウォーロードグループ(ムサシ、カッチン、ニコ他追従者)の目の前に滑り落ちてくる格好で遭遇になります。 ムサシは出会って早々に、再生者に対して「俺の精鋭チームに入らないか」と交渉を持ち掛けます(もし再生者が断らなかったら、カッチンが「再生者だから明日の朝には消えてしまう」と指摘します)。ムサシは「西のチームのスパイだったとは」「甲子園で雌雄を決するつもりだったが残念だ」など意味不明な言葉を発した後、周囲の人間に手を出すなと指示してから戦闘を仕掛けてきます。その場合、逃走/提案の判定は敵対者1名として扱ってください。 ムサシは日本語の言葉を発しますが、会話は成立しません。自律四輪車はそんな彼の信奉者です。もしムサシが敗れたら大半の追従者は大歓声を上げ、即座にカッチンを次のリーダーだと主張しますが、自律四輪車と数名の追従者がそれに反対しにらみ合いになります。再生者はその機に目標値7の生存判定を行い、成功すれば逃走できます。その場に残る場合、仲間割れの戦闘に巻き込まれて死亡します。何れにせよウォーロードグループは全滅します(カッチンとニコはなんとか生き延びます)。 カッチンは「ちょっと髪型を世紀末っぽくしてそれっぽい言動を取っていたら周りが持ち上げてしまい今の状態になった常識人」です。本当は暴力なんて振るいたくないし真っ当に生きたい、でも周囲の状況がそれを許さない…という状況に陥っています。 ニコはそんな彼を密かに理解しており、望むなら彼と共に逃げ出すことも考えていますが、ちょっと素直になれないツンデレ自律二輪車です。エレボスの事が嫌いなため再生者の事もあまり快く思っておらず、疑ってかかります(もし再生者がカッチンを説得しようとした場合、ニコが口を挟みます)。ただし根は単純なのでかなりチョロい子です。 ★ウォーロード遊撃隊 時間帯:いつでも 条件:以下参照 最初の遭遇以降、先行偵察などのためカッチンとニコはウォーロードグループとは別行動を行います。エレボスを通じてその情報はプレイヤーに明確に伝えてください。 ムサシを倒した場合やウォーロードグループを山道で足止めした場合でも、カッチンとニコは山道〜川辺村付近を移動しています。つまり会おうと思えば会えます。 ★カルネアデスの板 時間帯:深夜 場所:廃工場 条件:廃工場への避難を完了させた エレボスの案内: 「良いニュースと悪いニュースがあります。どちらから聞きたいですか?」 「良いニュースです。山向こうのコミュニティと接触中の再生者を通じて、受け入れの意思を確認したところ、快く迎えてくれることがわかりました」 「悪いニュースです。予期せぬトラブル(老人グループを村に残した場合、1名が回転体と遭遇した事によるショック死。ウォーロードグループを囮にした場合、回転体を前に逃走する者に対し敵前逃亡として内部粛清が発生し人数が減少)が発生しました。回転体転移条件を満たすため、あと1名の犠牲が必要です。10分以内にこの中から1名を川辺村へ移動させてください。対処が遅れるとここにいる全員が消滅します」 ※再生者の様子を見た村人は「何かあったのか」と問い詰めてきます。村人が事情を知ると、老人グループがシンに「どうするんだ」「リーダーとしてなんとかしろ、責任を取れ」と迫ります(カッチン(いる場合は「よそ者なんぞを受け入れるからこういうことになるんじゃ」と喚き散らします)。若者グループは猛反発し「老い先短い方が犠牲になるべきだ」「せめて役に立ってから死ね」と食ってかかり、互いに一触即発の状態になります。もし老人グループがいない場合、若者グループ同士で言い争いが起こります。再生者が発言をしない場合、クジか何かで決めるしかないんじゃないか、と誰かが提案します。 その後、以下の1〜3が同時タイミングで発生します。再生者は会話を共有しているため、相互に状況を把握します。なんにせよ、最初のエレボスの発言から10分以内に犠牲者を選べない場合、回転体により生存者は全滅します。 1.シンは未練を取得した再生者がいれば、リーダーの責務として自分が行くか、手持ちの槍で老人の1人を即死しない程度の傷を与えて生贄にすべきか(医療器具もないこの状況で、例えば腹部を深く刺されればまず助からない)、といった事を相談してきます。 2.タンバが同行している場合、彼は暫く状況を見守りますが、こっそりと離れ未練のある再生者に猟銃を渡し、自分を撃ち息があるうちに川辺村へ運んでほしい、と頼んできます。 3.カッチンが同行している場合、未練を取得した再生者に、罪滅ぼしとして自分が行くべきではないか、と相談してきます(彼はウォーロードグループの1人として多数の人間を殺してきたため、強い罪悪感を抱えています)。 ★廃工場の決闘 時間帯:いつでも 場所:廃工場 条件:最初に廃工場を訪れた 熊が襲ってきます。基本的に再生者の中からランダムに選んだ対象へ攻撃を行います。攻撃以外の行動は行いません。 廃工場の中には自律機械は入る事が出来ません(ニコを仲間に引き入れても戦力にはなりません)。 なお、熊の後方には2匹の子熊が見えますが、戦闘には参加せず親熊が死ぬと逃げていきます。 ★ヒャッハー! 時間帯:夜中 場所:川辺村の住人がいる場所(分断している場合、若者グループのいる場所) 条件:夜中(3フェイズ目)まで、ウォーロードグループを放置した イベント内容:川辺村(の住人)がウォーロードグループに蹂躙され、全滅します。人数が多いため基本的に再生者側には成す術もないでしょう。 ★山間の支配者 時間帯:エンディング 熊を野放しにした場合、どのような選択肢を取ったところで川辺村の生存者は全滅します。もし再生者が熊を放置している場合はエレボスからこの予測を聞かされます。本当に放置した場合、最後に結果を知らされることになります。 再生者が一度でも熊と交戦し手傷を与えていた場合、多くの犠牲は出ますが全滅は免れます。 ■想定されるステップ変更 ※あくまで一例となりますが、想定されるステップ変更の例を記載します。 ★ウォーロードグループを囮に使うため、村への到着を遅らせる(2パターン) ※重要事項:条件はどうあれ「川辺村への到着を深夜に引き伸ばす事は可能だが、それ以上遅らせる事は出来ない」とする。足止めの方法や遅らせる時間はどうあれ結果的に難易度は変わらない。 ステップ1:ウォーロードグループの足止め【交渉】(メソッド:調和/難易度13)  →例えば適当な嘘などが有効(「野球の試合を申し込みたい、メンバーを連れてくるから待っていてくれ」) ステップ1:ウォーロードグループの足止め【罠】(メソッド:生存/難易度7、達成値14)  →山道にトラップを仕掛ける、がけ崩れを起こし封鎖する、といった手法での足止めが有効 ★川辺村の老人グループを説得する(川辺村全員を移動させようとする場合に発生) ステップ2A:若者グループの説得(メソッド:川辺村/調和/難易度7) ステップ2B:老人グループの説得(メソッド:川辺村/調和/難易度11) ・エレボス「老人グループを説得するのは若干困難と思われます。彼らは頭が固い。再生者の話を信用する可能性は低いでしょう」 ★タンバの協力を得て廃工場の安全を確保する ※ステップ3自体に変更はないが、上記のステップ2Bが成功している場合、タンバから協力を申し出る。 ・タンバ「獣狩りなら、私に手伝わせてくれないか。いや何、このくらいしか取り柄がなくてね」 ★川辺村全員で廃工場を目指す(カッチンとニコの協力なし) ステップ4:安全圏までの避難(メソッド:山道/生存/難易度11、達成値22) ・エレボス「自律機械の補助も無しに、老人グループを含めた全員を脱出させるのは困難です。推奨しかねます」 ★川辺村全員で廃工場を目指す(カッチンとニコの協力あり) ・カッチンとニコの協力により避難作業が大幅に緩和される。前提:ウォーロードグループの足止めが完了していること ステップ4A:カッチンとニコの説得(メソッド:調和/難易度7) ステップ4B:安全圏までの避難(メソッド:廃工場/生存/難易度7) 【裏話】 「え、回転体の性質がおかしい?人間に対して攻撃的すぎる?」 「それはそうでしょう。そもそもアレは回転体ではありませんよ。回転体を模して作成された自律機械…の失敗作です」 「詳しくは私のマニュアルP246-247を参照して頂きたいのですが…攻撃機にデータ保存機能を持たせたのが問題だったらしく」 「"彼"はなんらかのルーチンに基づき今でもデータ保存のための行動を繰り返しているようです」 「まあ、人類が一定の文明力を取り戻せればアレも排除可能になるでしょう」 「犠牲のペースは非常に緩慢です。大きな問題にはなりませんよ」