TOPへ戻る





2007.06.20

風の聖痕RPG公式
風の聖痕RPGリプレイ 深淵の水龍


アニメ化もされ現在放映中の人気小説原作の新作SRS、
「風の聖痕RPG」のレビュー。
ちなみに筆者は原作未読です。



●ゲーム概要
  ■「風の聖痕」ってどんなゲーム?
  ■PCはどんな人?なにをするの?

●システム解説
  ■キャラクターメイキング
  ■クラスと特技
  ■能力値と判定方法、シナリオ進行
  ■戦闘ルール
  ■情報収集
  ■コネクションと絆効果
  ■レベルアップ

●その他
  ■その他

●おわりに
  ■雑感&ぶっちゃけお勧めですか?


■ 「風の聖痕」ってどんなゲーム?

 ゲームコンセプトは「文庫サイズのオーソドックス退魔RPGを気軽にプレイ」。 現代社会を舞台に、人知れず妖魔と戦う退魔師達の戦いの物語を描く SRS準拠のTRPGシステムです。

上に戻る



■ プレイヤーキャラクターはどんな人?なにをするの?

 舞台は現代日本。プレイヤーキャラクター(以下、PC)は精霊と契約し魔術を行使する術者「精霊術師」 (あるいは聖霊術師以外の魔術師/異能者)です。彼らは危険な存在「妖魔邪霊」を浄化する退魔師として、 世界の裏側で一般人に知られることなく戦いを続けています。

 風の聖痕の詳細な世界設定は  Wikipedia(風の聖痕)原作小説放送中のTVアニメを参照してください。

上に戻る



■ キャラクターメイキング

 キャラクターはクイックスタート(5つのサンプルキャラクターに設定情報を追加する方法)の他、 コンストラクション(自分で1からキャラクターを構築する方法)を選択することができます。 作成方法そのものは難しくは無いのですが、選択可能なクラスとその特技、アイテムなどの種類が多く組合せ幅が広いため、 時間が限られているときはクイックスタートか一部クラスを固定にして作成すると良いでしょう。

 キャラクター作成は、大まかに以下5つのプロセスで進行します。クイックスタートの場合、まず5つの サンプルキャラクターから1人を選択後、最後の「5.パーソナルデータの決定」のみ行います。
1.クラスの決定
トライブクラス(火や風等の属性)1種を1〜3レベル、スタイルクラス(武術の達人、名門の出身など立場や才能・設定)0〜2種を1〜2レベルの中から、全クラスレベルの合計が3レベルになるように選択します。
2.能力値と戦闘値の決定
能力値は任意の1つの能力基本値に+1する他は初期取得クラスにより自動的に決定します。 また、戦闘値は能力値と現在のレベルに応じたクラス修正から自動的に決定します。
3.特技の取得
選択したクラスで指定された特技(魔法や特殊な技など)を取得します。 特技は取得時の各クラスレベル以下のスキルから任意に選択する他、各クラスに初期取得の特技があります。
4.アイテムの決定
武器や防具、アクセサリなどの中から選択したものを、キャラクター作成時に与えられるポイントを支払って取得します。
5.パーソナルデータの決定
ライフパス(キャラクターの出自と経験、過去に出会った人間との関係)をROC(ダイスでランダムに決定するか、自分で指定かを選択)で決定します。 また、外見、性別、年齢、カバー(日常の職業。学生、警官、退魔師など)を任意に決定します。髪と瞳の色、身長はROCでも決定できます。


上に戻る



■ クラスと特技

 クラスはトライブクラスの中から1つ、スタイルクラスの中から最大2つまで選択できます。 選択可能なクラスは以下の通りです。

トライブクラス 主な特技(1〜20レベル)
炎術師 炎の精霊を使役し、武器や肉体を強化した直接攻撃を得意とするクラス。
範囲攻撃や多様な属性攻撃、ダメージ軽減の特技などを併せ持つ。
水術師 水の精霊を使役し、水による攻撃や幻惑を得意とするクラス。
範囲攻撃やバッドステータス、防御力増加、行動妨害やディスペル、変装や情報入手など幅広い特技を持つ。
地術師 地の精霊を使役し、攻撃・防御・回復・行動妨害など多面的な戦闘を行うクラス。
範囲攻撃や仲間の単体/範囲ダメージ軽減・武器強化・回復の他、バッドステータス攻撃、行動値低下など 様々な戦闘用特技を取得できる。
風術師 風の精霊を使役し、攻撃と自身の達成値上昇を得意とするクラス。
範囲攻撃や味方のダメージ軽減の他、自身や味方の達成値上昇、飛行や隠密、情報収集の特技を使用できる。
イレギュラー 上記4種の精霊術師以外の、イレギュラーに分類される特異な能力者や陰陽師といった術師のクラス。
情報の隠蔽やGMへの質問といった特殊技能の他、攻撃や達成値上昇、隠密、味方の攻撃強化、反撃、リサーチ補助など 多岐にわたる特技を持つ。
他のトライブクラスに比べ特技の数が少ない反面、特技が全て1レベルから選択可能なのが大きな特徴。


スタイルクラス 主な特技(1〜10レベル)
アヴェンジャー 己の敗北を力の糧とする復讐者のクラス。
味方をかばう、相手に自分を狙わせるといった自己犠牲の特技の他、自身の攻撃力を増加させる特技などを持つ。
アーティファクト 伝説の武器や宝具といったアーティファクト(原作における"炎雷覇"、"虚空閃"など)を扱うクラス。
アーティファクトを用いた攻撃の強化の他、ダメージ軽減やシーン攻撃の特技を使用できる。
アデプト 武術や魔術に熟練した達人であることを表すクラス。
攻撃力や命中値の増加、相手の達成値低下の他、封鎖や範囲ダメージ軽減、マイナーアクション追加のスキルなど多様な戦闘補助スキルを取得できる。
イノセント 純真無垢な少年少女など、庇護対象であることを表すクラス。
味方のダメージや達成値上昇、敵の達成値低下、強力な単体/範囲回復の他、 シーンにキャラクターを登場させたり、強制的に"お願い"をするなど、サポート系の特技と特殊な特技を併せ持つ。
エングレイブド "契約者"(コントラクター)に代表される特別な存在であることを表すクラス。
判定の振りなおしや味方一人の完全回復、装備の調達、味方の攻撃射や範囲拡大・クリティカル率上昇、 果ては「願いをひとつかなえる」といった、特殊かつ強力な特技を多く持つ。
ノーブル 名門や貴族など、高貴な家柄と精神とを兼ね備える者であることを表すクラス。
追加の常備化ポイントや特殊なアイテム"高級装備"の取得の他、離れた所にいる味方をかばう、 種別不問の達成値上昇、ダメージ無効化や振りなおし等の特殊な特技を使用できる。


上に戻る



■ 能力値と判定方法、シナリオ進行

 能力値は体力、反射、知覚、理知、意志、幸運の6種類あり、概ね最初に選択したクラスにより決定されます。 幸運以外の能力値は戦闘やリサーチ、幸運は登場判定やコネクションに用いられます。
 判定及びクリティカルとファンブル、シナリオ進行はSRSベーシックに準拠しています。 舞台裏(シーン未登場のPCが1回だけ行う行動)ではコネクション(後述)の取得とHP/MP回復(及び選択ルールで装備の購入判定)が行えます。


上に戻る



■ 戦闘ルール

 戦闘の手順は、「行動値(能力値などにより決定)が高い順に手番を得る」 「手番が来たらマイナーアクションとメジャーアクションを1回ずつ行う」といった従来のFEAR社製システム同様シンプルなもので、 攻撃に対する回避行動なども無制限に行えます。
 HPが0になったら戦闘不能ですが、「絆効果」(後述)を使用し"暴走状態"を宣言することで「耐久力半分の状態で復活、バッドステータス無効、特技の代償無消費、 HP回復不能、0になったら死亡」というお馴染みの状態になります。
 移動ルールはSRSプラグイン準拠です。


上に戻る



■ 情報収集

 リサーチは、能力値をベースに判定を行い、情報を得るタイプです。財産ポイント(いわゆる所持金)を つぎ込むことで達成値を上げられます。特技の中にも強力な情報収集特技があり、 特にイレギュラーは初期取得技能の《ダイレクトリサーチ》が強力なため、 PCにイレギュラーがいればリサーチが滞ることはまず無いでしょう。

ちなみに、情報収集ルールは「セッション進行に応じて使う追加ルール」という位置づけになっています。


上に戻る



■ コネクションと絆効果

 PCは「コネクション」と呼ばれる、他人との絆を持っています。コネクションは、PC作成時に3つ、PC間コネクションで1つもらえる他、 シナリオ中は舞台裏などで最大3つ、合計7つ得ることができます。コネクション1つにつき1回だけ、以下の「絆効果」という特殊な 効果を発揮することができます。絆効果はひとつのタイミングで1人1つまでしか宣言できませんが、他人の同じ絆効果は重複します。

 なお、一部の強力な特技は、代償として絆効果を1回分消費するものが幾つか存在します。

1.暴走状態に入る
 1シーンに1回だけ、前述の"暴走状態"になる。戦闘不能でなくても宣言可能。
2.クリティカル値減少
 判定のクリティカル値を−3。自分以外にも使用可能。
3.判定の振りなおし
 判定を振りなおす。
4.ダメージを上昇させる
 ダメージの属性を<神>に変更し、+5D6。[かばう]等が不可能。自分以外にも使用可能。
5.戦闘不能とバッドステータス、HPを回復する
 戦闘不能と死亡を含む全バッドステータス、暴走状態の如何に関わらずHP・MPを回復。1シナリオ1回まで。


上に戻る



■ レベルアップ

 PCは経験値を消費することで、自身の術者レベル(各クラスレベルの合計)を上昇させ、自身の持つクラスの中から1つを選んで レベルを上げることができます。レベル上昇により、戦闘値へのクラス修正が変化し、特技を1つ取得できます。
 また、経験値1点で10点の常備化ポイントを取得したり、コネクションの常備化・変更をすることができます。
 1シナリオに入る経験値は敵のレベルに応じて変化し、目的達成の経験値も任意に指定できるため、GMによる部分が大きくなっています (付属シナリオの場合、目的達成時の経験点は5点。ショートキャンペーン時の到達目標レベル等に応じて調整すると良いのでしょう)。



上に戻る



■ その他

 世界設定や組織情報は記載されています。しかし、 パーソナリティ(NPC)は原作の主要キャラクター8名を除く 24人が説明が大幅に省かれている他、精霊術の家系など組織に関する情報もかなり省かれており、 原作知識の有無で認識情報に大きな差が出てしまう感が否めません。

 但し、GMガイドとして原作知識の有無とそれに関連してNPCのロールプレイ、 原作設定無視の設定をPLが使用した際に想定されるトラブルと回避策、そういった部分を踏まえた コンセンサスの取り方等が記載されていますので、その部分を事前に読み込んでおけば幾つかの問題は避けられるかと思います。

 エネミーデータは全36体、シナリオは短めのものが1本(ハンドアウト等は無し)付属しています。

 尚、同じくSRSを用いている「アルシャードガイア」とのコンバートルールが記載されています。 本世界には加護が無いため、加護の使用ができないようです。同様に、本作のキャラクターをアルシャードガイアで 使用する際の指針も記載されています。

 また、原作のキャラクター達が本ゲームではどのクラスで構成されるかが解説されています。


上に戻る



■ 雑感&ぶっちゃけお勧めですか?

 絆効果が強力なため、バランスは若干大味です(絆効果を重複させればボスも瞬殺!)。 とはいえ全体の数字が破綻しているわけではなく、ゲームとしては無難に楽しめる出来になっています。
 リサーチ周りはかなり大雑把な為、その辺を細かくやりたい人には向いていません。

 原作の設定そのものがあまりアクが強いものでは無いのか、「精霊を使役する」という設定部分はルールそのものには 反映されておらず、特に考えずともサクっと遊べる作りになっています。
 ルールそのものは読み易く、索引もしっかりしています。作れるキャラクターの幅もそれなりにあり、 特にスタイルクラスが現代日本を舞台にしたキャラクターのイメージを考える手助けにもなっているため、 そういった部分には非常に好感が持てる作りになっています。
 逆に選択肢が多いためにキャラクターメイキングに若干時間はかかりますが、 そこは文庫サイズ故の低価格(680円+税)のため、各自購入して事前に作成する等することも出来るでしょう。

 原作未読の自分としては、原作キャラクターに愛着のある人間が居ないか、逆に原作NPCをスッパリ切って セッションを行うならば素直に楽しんで遊べる作品だと感じました。
 逆に原作ファン(GM/PL問わず)が未読者を気にかけず原作知識を前提にプレイするような事態に陥ると、あまり楽しい結果は 得られないのではないか・・・と危惧してしまい、そういった部分に対しては若干の不安があります。

 
 その手の不安要素を削るなら・・・

  ・全員が原作を知っている(未読の人は努力する)
  ・全員が原作を知らない
  ・原作設定(NPC等)を殆ど使わない(あるいはGMが設定知識の差を埋めるよう努力する)
  ・原作とはパラレルワールド、或いは完全に別の世界観にしてしまう

 といった具合にプレイ環境を調整すれば、問題発生を回避できるのでは無いでしょうか (他にも色々といい手段があると思います)。
 

 何にせよ、価格は控えめで全体的な出来も悪くないこのゲーム。この手のジャンルが好きな方にはとりあえず お勧めできると思います。





TOPへ戻る



風のスティグマ